君と私。


『んー!!』


大きく背伸びをして肩の力を抜く、

【ジャーー!!!】

キーパーに水が入って行く音が耳に響く。

「愛衣」

『うゎ…なり先輩』

芝原成嗣(しばはら なりつぐ)先輩はサッカー部の部長
うちは強豪らしく、キャプテンも大変。


「うゎって失礼だなww」

この人は世に言う【天然たらし】というところ。
爽やかスマイルで私の頭を平然と撫でる。


『先輩は悪魔ですね』

「なんで?」


これ他の子がされたら鼻血出すよ。


『ま、先輩には分かりませんよ』


【キュゥっ!】


蛇口を閉めた時、隣から手が伸びてくる


『あ…』


「いーのいーの、
愛衣は女の子でしょ?」



聞きましたか?
この人絶対わかってやってるよ。


『私はマネージャーです
仕事なんですー』



するとナリ先輩が私の手をつかむ


「これくらいはかっこつけさせて」


なんか…今少しだけ胸が高鳴った。


『かっこいいなぁ…今の』


「それ本人に言う?」



並んで歩くと身長差がやばいことに気づく。



『先輩』


「ん?」



私はキーパーを半分持つ




『半分こ…しましょ』


「なんかさ、仲良しこよし?」


いや、冗談でもやめてほしい。



『先輩のファンに殺されます』



「え?!俺にファンいんの?」



私は先輩の手からかごを取ってしかめっ面する




『いーまーす!』




ほんとにこの人はどこまで天然なんだろ。




「なら好きな子に好かれたほうがいいかなー?」



笑って私を見るナリ先輩



いや、その前に




『え、好きな人いるんですか?』


「俺をなんだと思ってるのww
いるよ、すごく好き」



うわぉ、なんだこのカワイイ顔は
てか好かれてる人殺される確定じゃん。



「残念ながら、全然気づいてもらえない」


『鈍感ですねー、その人
ま、先輩に好かれるほどだからカワイイんでしょーなー』


「うん、めちゃくちゃカワイイ
顔だけじゃなくて、優しいところも………すき」



顔を赤くして言う先輩。
私より女子力あるんじゃないの?



『恋するってその人のこと変えますね』


彩菜も先輩も律樹に告白する女子も皆きらきらした目してて少しだけ羨ましかったりもする。
もう、しようとは思わないけど。



「大丈夫!
愛衣はモテるからね」



『モテません』


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