騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「ビアンカ……お前が本気で嫌がるなら、俺は、これ以上は強要しない」
それでも意識が遠退きそうになるたび、彼の甘い囁きが耳の奥で木霊した。
そっと瞼を開ければ何故か余裕をなくしたようなルーカスの黒い瞳と目が合って、言いようのない感情がビアンカの胸いっぱいに溢れ出す。
「お前の泣いてる顔は見たくはないんだ。だから、無理だと言うならこれ以上は──」
「やめ、ないで……」
「ビアンカ……?」
「私……ルーカスのこと、もっと知りたい……。だからお願い、やめないで……」
自然と、口から言葉が零れ落ちていた。ビアンカの顔は今までにないくらいに羞恥の色に染まっている。
恥ずかしさに耐え切れず、乱れたシーツをビアンカが口元へと引き上げると胸元には赤い執着の花が咲いていた。
いつの間に──と思ってビアンカが上目遣いでルーカスを見上げると、何故か視線の先の彼は彼女を見下ろしたまま固まっている。
「ル、ルーカス……?」
「……っ」
伺うように彼の名前を呼んだ瞬間、ルーカスの顔がパッと赤く染まった。
予想外の反応にビアンカが目を見開くと、ルーカスは片手の甲で自分の口元を隠して眉根を寄せる。