騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
 


「毎夜、飽きずに夜を共になさっているのですから。国王よりも先に、ルーカス様にお子ができるのではないかと噂をし、賭けまでしている輩もいるほどです」

「確か……オリヴァー国王陛下の奥さまは、ご病気で療養中なのよね?」

「はい。なんでも随分と体調がよろしくないらしく、奥さまは祖国にお帰りになられていると……。だからこそ今、ビアンカ様たちの夜の噂が、こんなにも王宮内を賑わせているのですよ」

「ハァ……」


アンナの言葉に、ビアンカは思わず項垂れた。

女というものは基本的に噂好きな生き物だ。

たった今、アンナから聞かされた噂は先日、女官たちが囁いているのを偶然耳にしてしまったばかり。

──国王夫妻よりも先に、第二王子の妃に子が出来るのではないか。

数年前に正妃を迎えた現国王、オリヴァーにはまだ、子がいない。

国王夫妻に世継ぎのいないこの状況でビアンカが身籠れば、王宮内は良い意味でも悪い意味でも、賑わいを見せることは間違いない。


「だけど、こんなにも早くそんな噂が広がるなんて……なんだか、変な感じだわ。プライベートも何も、この王宮にはないのね……」

「まぁ、それは確かにそうですね。ですが、あのルーカス様のお話ですから、余計に広がるのが早いのでしょう」

「どうして?」

「ルーカス様は、女性からはあの人並み外れた容貌のせいで注目の的です。そして男性たちからは剣の腕と騎士団長というお立場、なにより英雄と呼ばれる彼を憧れの目で見るものは多いですから」

「はぁ……」


今度は思わず、ビアンカの口から感嘆の息が零れた。

今更ながら、ルーカスの凄さを思い知る。

改めて考えてみてもどうして彼が自分を妻に選んだのか……ビアンカはルーカスを知れば知るほどに、疑問が募るばかりだ。

 
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