騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
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「ビアンカ・レイヴァ王女。セントリューズに、ようこそ」
目的地である王宮に着き、馬車を降りたビアンカを出迎えてくれたのは、栗色の髪が美しい青年だった。
一瞬、夫となるルーカスかと思ったが、すぐに違うと思い至る。
今、ビアンカの目の前にいる青年は、髪の色も違えば瞳の色もブルーで、ビアンカが知るルーカスの特徴を持ち合わせてはいない。
記憶の中の彼は、黒髪の少年だ。
幼い自分を見つめる瞳の色も間違いなく黒だった。
「長旅で、お疲れでしょう。婚儀まで、どうか王宮内で身体をお休めください」
そう言う彼の年齢は、三十歳前後だろうか。
品の良い顔立ちと知的な雰囲気が、なんとなく、ビアンカの姿勢を正させる。
「お気遣い、ありがとうございます。ところで、あの……あなたは……」
「ああ、失礼。申し遅れました。私の名は、オリヴァー・スチュアート。こうしてお会いできたのを、とても嬉しく思います」
──オリヴァー。
それは何を隠そう、セントリューズの現・国王の名前だった。
年齢は確か、二十七。ビアンカがこれから嫁ぐ、ルーカスの兄でもある。