騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「それとも私には話せぬようなことを、我が姫とこのような場所で共有しようとでも?」
「と、とんでもない……!」
ルーカスの言葉にダラム国王が、ビアンカを掴んでいた手を静かに離した。ようやく痛みと嫌悪から、解放されたビアンカは、国王から離れて安堵の息を吐く。
「ビアンカ、こちらへ」
「は、はい……っ」
呼ばれたビアンカは掴まれていた手首を抑えながら、慌ててルーカスのそばまで駆け寄った。
そうすれば空いている右手で、ルーカスの腕の中へと引き寄せられる。
「も、申し訳ない。貴殿の妃であるとは露知らず……ただ、話をしたいと思っただけなのです」
よく言う。ビアンカがルーカスの妻だと知りながら、こんな場所まで連れ込んだくせに、今更どんな言い訳だ。
「……そうですか、それは失礼。しかし、もしも国王殿が我が姫をその手に抱こうとしようものなら、私はダラムを滅ぼさなければならないところでした」
「そ、そんな……っ、滅相もない!」
「誤解であったのなら、この足元に転がるゴミたちを連れて、一秒でも早くこの場から立ち去ることをお勧めする。……私の気が、変わらぬうちに」
「ヒ、ヒィ……ッ」
ルーカスの言葉を合図に、ダラム国王は腰を抜かしていた衛士と二人で、気を失っている衛士たちの足を掴んだ。
そのまま重そうに身体を引きずって、そそくさとその場をあとにする。