騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「……このあとの晩餐会でお会いできるのを、楽しみにしております」
去り際に、ルーカスからそんな言葉を投げられた国王の顔は相変わらず真っ青だったけれど。
四人が去って、静寂に包まれた空間で、ビアンカは気が立っているらしいルーカスをこっそりと盗み見た。
と、腕の中で顔を上げた途端に目と目が合って、すぐに逃げ道を失ってしまう。
「あ、あの……」
「どういうつもりだ」
二人の声が重なる。ビアンカを見るルーカスの目には、隠しきれない苛立ちが滲んでいて背筋が凍った。
「ごめんなさい、私、」
「ノコノコと、こんなところについて来て……一体、どういうつもりだと聞いている」
「そ、それは……」
「その気があると、言っているようなものだ。それともダラム国王と、本気で密事でも楽しむつもりだったのか」
その気がある。本気で密事を楽しむつもりだった。
思いもよらないルーカスからの言葉に、ビアンカは声を詰まらせた。
……決して、ノコノコとついてきた訳じゃない。
精一杯抵抗しようとしたし、嫌だと断りもした。
だけど国同士の関係がチラついて、全力で拒否することができなかっただけだ。
ビアンカはビアンカなりに、セントリューズを思っていた。
何より、何か粗相をすれば夫であるルーカスに迷惑がかかると思って、思うように動けなくて──。