騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「ん……っ」
しっとり冷たい、布の感触。
けれど頬に触れるものは固く無機質で、それが床なのだと気付くのにそう時間は掛からなかった。
ビアンカが目を覚ました時、彼女の身体は石造りの床の上に転がっていた。
石造りなのは床だけではない。壁も天井も石造りで、古めかしい。
「ここ、は……?」
見たこともない場所だ。見上げた天井には、蜘蛛の巣が張っている。
薄暗く、鉄格子のついた小さな窓から差し込む僅かな光しか取り込めないような、息苦しい部屋。
「う……っ、けほっ、ゴホッ」
重い身体をどうにか持ち上げようと床に手をつくと、床に積もったホコリを吸い込んでしまった。
(確かに、私は王宮内にいたはずなのに……)
一体、ここは、どこなのだろう。どれくらいここで眠っていたのだろう。