騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「まぁでも、すべてを片付けてから、思い切りお前を抱くのも悪くない」
「……なっ」
「その代わり、覚悟しておけ。……今日は夜が明けるまで、お前を思う存分堪能してやる」
「……っ」
耳元に唇を寄せながら、告げられたのは、甘い甘い宣告だった。
夜が来るのが怖いのに、期待している自分がいる。ルーカスの妻になってからというもの、そんな夜ばかりで一向に、落ち着いて眠れない。
「……ジェド、お前先ほど、側近から証言を得たと言ったな」
「は……はいっ!?」
突然声をかけられたジェドは、声を裏返らせながらもなんとか返事に成功した。
見ればジェドの顔は明らかに緩んでいて、やっぱりどうにも居た堪れない。
「ジェド、どうなんだ」
「は、はい! 確かに、証言は取りました。我々が用意した娼婦をアーサー殿に与え、その娼婦から間違いないとの報告を受け我々が彼の身柄を拘束し……今回の計画の全容を、一通り吐かせました」
前宰相、アーサー? 思わぬ名前がジェドの口から飛び出して、ビアンカは自分の耳を疑った。
「アーサー殿はいつでも、我々が動かせるように捕えております」
「ハッ……。前宰相の名折れだな。アーサー殿も地に落ちた。まぁでも、そのお陰で確信を得ることができたのだから感謝する」
今、ルーカスとジェドが話しているのは王宮内に潜む、黒幕についての話だろう。
前宰相アーサーといえば、今は──王太后陛下と懇意にしている人間だ。
ビアンカがセントリューズに嫁いだばかりの頃、ジェドに王宮内を案内してもらっていた途中で、二人と鉢合わせたことがあった。
その時に二人は、ビアンカの前で堂々とルーカスと王立騎士団のことを貶していたが……。
まさか、あの二人が今回のことと関係しているとは信じがたい。