騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「……アーサー殿が、全ての黒幕は王太后陛下であると、ハッキリと証言しました」
ジェドの重い言葉にビアンカは息を飲む。
「証拠は?」
「二人がやり取りをしていた書簡と……団長を亡き者にしたあとは、我々騎士団の規律や団員を一新し、アーサー殿の息子を新しい騎士団長に就任させることを計画した資料も入手済みです」
「そうか」
「念のため、アーサー殿の息子も我々騎士団が押さえております」
ジェドのその言葉に、ルーカスはそっと目を細めた。
かくいうビアンカは、たった今二人の間で交わされた言葉を必死に頭の中で繰り返していた。
──王太后陛下と前宰相アーサー殿が、全ての黒幕?
まさか、そんなことって。それでもそう考えると、不思議と色々なことに納得がいくせいで否定のしようがなかった。
……今日まで王宮内で過ごしてきた中で、ルーカスに恨みを持つような態度を示していたのは、あの二人だけ。
それ以外の人物は誰もが彼を英雄だと讃え、敬い、崇めていた。
もちろん中には、ルーカスのことを快く思っていない人間もいただろう。
けれどあからさまな態度に出していたのは、あの二人だけで──。
「では、残るは王太后陛下だけということだな」
冷静なルーカスの言葉に、その場にいた誰もが息を飲み、黙り込んだ。