騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「──ルーカス!」
「……っ!!」
オリヴァーの声にビアンカの身体が揺れたのは、一瞬だった。
直後、美しい回廊を一人の男が真っ直ぐに歩いてくるのが見えて、金縛りにあったように身体の自由が効かなくなった。
──まるで、この世のものではないような。
その、あまりに美しい出で立ちに背筋が震え、思わずゴクリと喉が鳴った。
絢爛豪華に煌めく回廊に、決して引けを取らない。
寧ろ──金銀に輝く芸術品よりも、今、目の前に現れた男の方が美しく、目を奪われる。
(ルーカス……?)
癖のない黒髪から覗く、鷹のような鋭い目。
黒曜石のような黒い瞳はすべらかな肌によく映えて、一度捕らえられてしまえば目を逸らすことは叶わなかった。
ビアンカよりも頭一つ半ほど高い背に、精悍な身体つき、長い脚。並んで歩いたら歩幅が合わず、ビアンカはきっと、置いていかれてしまうだろう。
彼の姿勢が良いからだろうか。男らしい体躯からは何故か気品も感じられ、溜め息も零れそうなほどの色気も纏っていた。