騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「ね、ねぇ、ルーカス? まさか、今向かっているところって……」
屋根裏部屋を出たルーカスが、真っ直ぐに向かったのは大食堂だった。
広い庭園を横目に美しい回廊を抜け、大きな扉の前でようやく足を止めた彼は不意に、ビアンカへと視線を落とした。
「さぁ、行くぞ」
間違いない。ルーカスは今から、晩餐会の場に赴こうとしているのだ。
目の前の扉を開けると待ち構えているのは広い応接間。その先にあるのは今まさに、晩餐会の執り行われている大食堂だ。
(だけど、ちょっと待ってよ……)
先も言った通りドレスはホコリで汚れているし、髪だって乱れているし。
ルーカス自身も正装ではなく騎士団の制服姿だし、こんな格好で晩餐会に顔を出すなどみっともないにも程がある。
「中に、王太后陛下もいるはずだ」
──王太后陛下。ハッキリとルーカスの口から紡がれた名前に、ビアンカはハッとしてから彼を見上げた。
「俺とお前の命を狙ったのは、兄オリヴァーの母であり……先代国王の正妃でもある人間なんだ」
感情の読み取れない声で、淡々とそれだけを言ったルーカスはビアンカをそっと、床の上に下ろした。
先代国王正妃、王太后。
背の高いルーカスを見上げながら、ビアンカは静かに口を開く。