騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「ルーカス、内側の敵とはどういうことだ」
案の定、声を潜めたオリヴァーが、ルーカスに説明を求めた。オリヴァーの視線を真っ向から受け止めたルーカスは、再び静かに口を開く。
「内側の敵は私の命、そして私の妃の命を狙っておりました」
「二人の、命を……?」
「はい。しかし、それはあくまで最終目的です。今回、それがたとえ失敗に終わっても、敵は私の失脚、そしてあわよくば王立騎士団の実権を握ることができれば良いと考えていたのです」
その時、一瞬、王太后の表情が曇ったことをビアンカは、見逃さなかった。
ルーカスも、同じだろう。彼女を挑発するように、フッと口角を上げた彼はオリヴァーに目を向けたまま、淡々と言葉を続ける。
「晩餐会の開かれる今日を選んでビアンカを攫ったのも、そのためです。寵愛する姫を攫われ、冷静さを欠いた私が、この場に乗り込んでくることを内側の敵は、狙っていた」
王太后は、ルーカスを騎士団長という地位から失脚させようと目論んでいたのだ。
まさかそれが……返り討ちにされようとは、思ってもいないだろう。
「近隣諸国の名だたる王たちの前で、私に恥を掻かせ……王宮内に賊を侵入させたという失態を見せつけ、王立騎士団の名に泥を塗る。そうすることで、我が騎士団の体制の見直しをオリヴァー国王陛下に求め、私の立場を悪くさせようとお考えだったようですが」
「……っ!!」
「王宮内に侵入し、ビアンカを攫った男はすでに我々騎士団が捕えております。更に、男と共謀して彼女と私の命を狙った人間の割り出しも済み、我々の手中に。……今回の計画を記した書簡や証人も全て、我々が押さえています」
「何……?」
ルーカスの言葉に、再び王族たちがざわめきだした。
ビアンカに手を出そうと目論んだダラムの国王など、「このような危険な国からは今すぐ撤退だ!」と、喚く始末だ。