騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「このような厳粛な場でのご無礼、申し訳ありません。団長の命令により、証言者を連れて参りました」
ハッキリと透る声で言葉を述べたジェドは、一体いつから扉の向こうに控えていたのか。
俯くアーサーを連れながら一歩、前に出る。
小さく震えるアーサーは、元々男にしては身体が小柄な方ではあるが、今はいつも以上に小さく見えた。
「……アーサー殿。そなたに聞きたいことがある。私の前で、偽りの証言をすることは許されない。それを肝に命じて、答えよ」
「………はい、国王陛下」
ぽつり、と。消え入るような声で返事をした彼に、オリヴァーは努めて冷静に言葉を続ける。
「そなたと、私の母である王太后陛下が手を組み、我が弟であるルーカスと、その妻ビアンカの命を狙ったというのは本当か?」
「は、はい……。私は、王太后陛下に命令され、ルーカス殿下に恨みを持つ男を探し、報酬を渡す手配をしました……。ルーカス殿下亡きあとは、私の息子を王立騎士団の騎士団長に据えてくださると、約束して……」
「アーサー!! 何を言う……!!」
再び、耳をつんざく悲鳴のような声が、大食堂に響き渡った。
怒りで顔を真っ赤にした王太后を見て、アーサーは年甲斐もなく怯え、唇を震わせている。
「……そちらの、侍女は。確か最近、母に仕えたばかりの者と記憶するが」
「は、はい……!! わ、私は……今朝、突然、王太后様に贔屓の宝石商の男が訪ねてくるので、王宮内に入れるようにと言われました。彼とはゆっくり話したいので、離れの棟へと通すようにと言われて……」
その、男というのがアストンの元将軍であり、ビアンカを攫った賊であったということは、その場にいる全員が優に想像のつくことだった。
ゆっくりと、オリヴァーの青に輝く瞳が王太后へと向けられる。
その目には怒りとも、焦燥とも取れる色が滲んでいて、ビアンカは思わず息を呑んだ。