騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「母上……いや、王太后殿。今、彼らが言ったことは、事実ですか?」
誰もが息を殺して、彼女の口から出る答えを待った。
彼女の目を彩るのは憎悪と嫌悪。そのどちらもが、質問をしているオリヴァーではなくルーカスへと向けられていた。
「王太后殿……」
「………薄汚い鴉を排除しようとして、何が悪い」
「……っ」
「あの鴉は!! オリヴァー亡きあと、王位継承権を得てセントリューズを我が物にしようと考えているのだ!! だから私は、セントリューズのため……そして、オリヴァーのためにこの手を汚した!! 穢れた血が、由緒正しきセントリューズの王の座に付くなど!! 決して、許されることではないのだから!!」
顔を真っ赤に染め上げて、肩で息をする王太后には、もう周りを気にする余裕などなかった。
ルーカスが、彼女の実の息子でないことを知らない面々は、驚いたように固まり言葉をなくしてしまっている。
「オリヴァー!! あなたも、あなたよ!! あなたが早く世継ぎを作らないから、こんな鴉になど付け込まれるのです!! セントリューズを、この男に乗っ取られても良いのですか!?」
「……母上。私は、ルーカスがセントリューズを乗っ取ろうなどと考えているようには、とても思えません」
「ハ……ッ。あなたって子は、本当に優しいのね。ルーカスは、その女と共謀し、毎夜子作りに励んでいると聞いたわ。薄汚い鴉の妃も、所詮薄汚い女よ!! このままではいつか、今度はあなたが、その二人に命を狙われる!! あなたを殺して、セントリューズを我が物にしようと、この二人は企てて──っ!?」
──バシャンッ!!
その時。突然、大きな水音が部屋に響いた。
いつの間にかルーカスの腕から抜け、テーブルの端に置いてあった水差しを手に取ったビアンカは、興奮してオリヴァーに詰め寄る王太后のそばまで詰め寄った。
そして、彼女の後ろに立つと彼女の頭上で水差しをひっくり返したのだ。
お陰で頭から水を被り、ずぶ濡れになった王太后は時間が止まったように固まっている。