騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「残党は部下たちが追い、一人残らず捕えたとの報告も受けました。ここ最近、王都に現われては悪事を働いていた一味は一人残らず、息の根を止めることができたかと」
そう言うルーカスが今、身に纏っているのは、どこからどう見ても軍服だった。
彼の髪色と同じ黒い軍服には、黒地に美しい金糸の刺繍の施された詰襟。
細身の下衣に重ねられた黒い編み上げロングブーツ、腰に下げられたサーベルの鞘には王家の紋章が刻まれていた。
──まるで、黒い薔薇。
黒薔薇をこの目で実際に見たことはないけれど、彼の洗練された雰囲気と出で立ちから、ビアンカは、そんなことを思わずにはいられなかった。
「ハァ……ルーカス。お前、そんな報告よりまずは、これから自分の妻となるビアンカ王女を出迎えられなかったことを、王女自身に詫びるべきだろう」
オリヴァーが、呆れたような息を吐く。
「それに、今から婚儀を挙げる奴が山賊に手を下してきたなんて……。縁起でもない上に、何よりビアンカ王女を怖がらせてしまう」
けれど当のルーカスは、表情一つ変えることなく真っ直ぐにオリヴァーを見つめていた。