騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「建前上でも、貴方は私の夫の母なので。私は、貴方に敬意を払います」
「……っ」
「短い間でしたが、お世話になりました。ルーカスを……今日まで生かしてくれたことに心から感謝します」
それはビアンカからの、精一杯の譲歩だった。
本当なら、自分とルーカスを殺そうと思った相手に感謝など述べたくはない。
それでも今日まで……ビアンカとルーカスが結ばれる日まで、彼女はルーカスを殺さなかった。
ただ、今回のような機会とキッカケがなかっただけかもしれない。
もしかしたら今日まで何度か、彼の命を狙ったこともあったかも。
だけど、たとえそうだとしても、ルーカスは今、生きている。
今、ビアンカの隣に彼がいるのは──王太后が自分のプライドを守るためでも、彼を生かしたからに他ならない。
「……私は国王として、常に公正な判断をしなければなりません」
唐突に、口を開いたのはオリヴァーだ。
「ルーカスは、我が国の誇る優秀な騎士団を率いる男。そして……私の心強い右腕であり、大切な弟です」
彼はビアンカを見て穏やかに微笑むと、今度はルーカスへと目を向ける。