騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「……王太后殿。貴方には生きて、罪を償っていただく」
「え……」
「簡単に死んでしまうよりも、生きて罪を償う方が何倍も辛いからな。貴方にはこれから生きながらにして、オリヴァー国王陛下と、我々が築く新しいセントリューズを見ていただこう」
真っ直ぐに、王太后へと告げたルーカスは、ビアンカの身体を抱きよせた。
たった今、彼が口にした言葉は先ほど、ビアンカがアストンの元将軍に向けて放った言葉だ。
あの時ビアンカは、所詮、戦場を知らない自分の考えは甘いのだろうと思ったけれど……。
ルーカスはビアンカの想いを汲み、肯定してくれたのだ。
お前は間違ってはいないと、認めてくれた。
「ルーカス……」
「──ビアンカ。俺達の部屋に、帰ろう」
ビアンカを抱き締めるルーカスの腕は、いつだって温かい。
結局その日の晩餐会はそのままお開きとなり、セントリューズの国内外は、しばらくの間騒がしかった。
けれど、事の成り行きを見守っていた近隣諸国の王たちは口々に、囁いていた。
──セントリューズはまた、あの兄弟によって大きく力を広げそうだ。
しがらみを捨てた兄弟の絆は深いものになったと、オリヴァーとルーカスの二人を酷く、恐れた。
そして、何より。名だたる王たちが注目したのはルーカスの妃、ビアンカだった。
冷酷無情な騎士団長を支える妻は、とても肝が座った女だと……。
怒らせると一番厄介なのは、ルーカスの妻であるビアンカだと。
ビアンカの意思とは裏腹に、彼女は近隣諸国にその名を馳せることとなってしまった。