騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
 


「──後生です、陛下。ノーザンブルの第一王女、ビアンカ・レイヴァとの結婚を申し出たい」


王宮内でも一番の広さを誇る、国王執務室。

入口の扉を開けた正面の窓の向こうには美しい王宮庭園が広がっている。


「今すぐにでも彼女を、私の花嫁に迎えたいのです」


この世には存在しない、黒薔薇のように美しいルーカスは、凛と通る声でそう言うと、迷いのない目で真っ直ぐにオリヴァーを射抜いた。

各言うオリヴァーは、狐につままれたような顔で固まっている。

それも、そのはず。ルーカスはつい先日、友好国から申し出された縁談を、言語道断で突っぱねたばかりなのだ。


「突然、何を言い出すかと思えば……。お前が結婚など、どういう風の吹き回しだ」


驚いたような、呆れたような声を零したオリヴァーは、右手に持っていた羽ペンをデスクの上へと落とした。


「その上、今すぐなど……。何か、可笑しなものでも食べたのか」


まさかルーカスが、結婚など。その上、今すぐと言い出したら理由を聞かずにはいられない。

これまで幾度となく舞い込んできた縁談を、全て断り続けてきた男が一体何を言い出すのかとオリヴァーは夢でも見ているような気分だった。

 
< 203 / 224 >

この作品をシェア

pagetop