騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「アンナ!! 一体、どういうことなの!?」
婚儀は大きな問題も起きることなく、厳かに執り行われた。
美しい礼拝堂と、光り輝くステンドグラス。
黒い軍服から白い礼服に着替えたルーカスは、そのどちらにも負けないほど目の眩むような美しさだった。
けれど、肝心のルーカスはビアンカなど視界に入っていなかったように思う。
婚儀の間、ただの一度もビアンカに声を掛けることもなく、真っ直ぐに前を向いた横顔からは感情を読み取ることができなかった。
唯一、二人の目が合ったのは司祭の祝福を受けたあと、互いに誓いの言葉を口にした時だけだ。
『汝、ビアンカ・レイヴァを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか』
『──はい、誓います』
礼拝堂内に凛と響く、力強い声だった。
驚いたビアンカは、思わず瞬きも忘れてルーカスを見つめた。
するとルーカスは、一瞬だけ熱の籠った瞳でビアンカを見つめたあと、不意に、愛おしげにその目を細めたのだ。
絡まる視線と視線。
ビアンカの胸の鼓動が、小さく跳ねる。
二人の結婚は国と国を繋ぐための政略結婚。
お互いに恋愛感情などないはずなのに、ルーカスはビアンカを愛している──なんて、そんな錯覚すら覚えそうになるほど、ビアンカを見つめるルーカスの目は優しかった。