騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「本気を出したら、俺なんて簡単に倒せる……だったか?」
「だ、だから、それも……っ、ホントに……」
「ついでに、この国一の剣の使い手になるつもりらしいな」
「……っ」
「ところで剣の鍛錬は、一体、何年積むつもりなんだ?」
「……!!」
大切な、国を掛けた政略結婚だった。それなのに、出鼻から失礼な言葉と態度を夫にぶつけただけでなく、オリヴァーや先代国王のことまで罵ってしまった。
目を細めたルーカスは、狼狽えるビアンカのことを真っ直ぐに見下ろしている。
その目は決して怒っているようには見えないけれど、本来ならば国に送り返されても文句を言えないくらいには、大変なことをしてしまった。
「あ、あの、私──」
けれど、青ざめながら必死に言葉を探すビアンカを前に、ルーカスはそっと目を細めた。
「……どうしてかな。お前の言葉だけは俺の心に真っ直ぐに、突き刺さる」
「え……」
「ビアンカだけが……俺の心を、揺さぶるんだ」
初めて口にされた名前は、真綿に包まれたような優しい声色だった。
思わず、幼い日の記憶が蘇ってくるような。初めてルーカスと出会った日のことを思い出させるような、優しく、穏やかな声だった。