騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「……怖いか?」
「……っ」
──怖い。怖くて怖くて、たまらない。
そう、正直に伝えられたらどれだけ良いか。
彼に触れられるたびに自分が自分ではなくなっていくように感じて、どうすれば良いのかわからなくなった。
「ビアンカ……」
再び名前を呼ばれても、身体を強張らせているビアンカの耳には届かない。
それでも今、ビアンカはルーカスを拒否することはできないのだ。
彼と肌を重ねることも、妻としての大事な役目。
それを確認するように、ビアンカの身体に触れるルーカスの指先。
全部、頭ではわかっている。それでもどうしても、ビアンカの心が彼の熱についていってはくれなかった。
……もちろん今まで、異性と肌を触れ合わせたことなんてない。
これから何が起こるのかも──十七になったばかりのビアンカは、ぼんやりとしか知らなかった。
夜のことは、男に身を任せていれば良い。女は余計なことは考えず、ただ身を委ねれば良いのだ。
それだけを信じて今日を迎えたビアンカにとって、この先に起こることは恐怖でしかなかった。
自然と閉じた瞼には力が入り、シーツを掴む手が震える。
心臓はバクバクと高鳴っていて、自分を組み敷くルーカスには聞こえてしまっているかもしれないと更に怯えた。