騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「あ、あの……」
「……大丈夫だ」
「え……?」
「今日は、このまま眠ろう。抱き締めあって寝るだけでも、十分だ」
ふっと、柔らかに微笑んだルーカスは、そのまま、「着替えてくる」とだけ告げて、ドレッシングルームへと姿を消した。
その背中を追い掛けるように身体を起こすと、ギシリとベッドのスプリングが小さく唸る。
ふと、夜に染まった窓に自身の姿が映り込んで、ビアンカは思わず固まった。
肩紐の落ちたネグリジェと、ほんの少し、乱れた髪。
『他の男には、指一本、触れさせはしない』
耳に残るのは、耳元で甘く囁かれた、愛の告白にも似た彼の言葉──。
(あれは一体、どういうつもりで口にしたのだろう……)
ビアンカとルーカスの結婚は、国と国を繋ぐための政略的なものに違いないのに。
どうしてルーカスは、自分を慕っているかのような言葉を口にしたのか、ビアンカはわからなかった。
「……っ!!」
その時、ビアンカは自分の身体を見て固まった。胸元に、綺麗な赤い花が咲いていたのだ。
それはまるで、ルーカスと初めて会った時に見た、あの薔薇の花弁のようで……。
「どう、して……?」
(ルーカスは一体、何を考えているの?)
胸元に咲くのは執着の花。
ビアンカが自分のものであると誇示する、キスマークだ。
身体には未だ、彼から与えられた甘い熱が残っている。
ベッドサイドでゆらゆらと揺れる、キャンドルの淡い灯火。
ビアンカは乱れたネグリジェを胸元まで引き上げると、赤く染まった頬を隠すように自身の膝の中へと顔を埋めた。