騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
逞しい腕と、筋肉質な身体。彼の身体はとても熱くて、渡された言葉は甘かった。
ルーカスが、すぐに眠ったかどうかはわからない。
後ろから抱き締められていたビアンカは彼の寝顔を見ることはできなかったし、身動き一つ取ることも叶わなかったから。
生まれて初めて、異性の腕に包まれて過ごす夜。
緊張して、とても眠れそうもない──と思ったのは最初だけで、長旅と婚儀で疲れ切っていたビアンカは、知らぬ間に眠りの世界へと落ちていた。
逞しく、温かい腕の中。不思議と夢も見ず、朝、目が覚めるまでぐっすりと眠った。
そのせい、なのだろうか。ルーカスのいなくなったベッドは……なんとなく、寂しくて落ち付かない。
「──ビアンカ様、お目覚めになられましたでしょうか?」
と、タイミングよく扉を叩いたのは侍女のアンナだ。
ビアンカが「入って」と返事をすると、ゆっくりと扉が開く。
「おはようございます。ご気分は、いかがですか?」
言いながら、アンナがティーワゴンを押して部屋の中に入ってくる。
アンナの押すワゴンにはビアンカの好きなアーリー・モーニングティーが用意されていて、思わず胸が安心感に包まれた。
宙を舞う甘い香りの正体は、ビアンカの大好物である濃いめのミルクティーだろう。