騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「ルーカスは多分、みんなが思っているような酷い人じゃない。本当は優しくて、温かい人で……」
山賊の子供たちは修道院へ連れて行ったし、夜の営みをビアンカに強要もしなかった。
「もしかしたら、みんなはルーカスのことを勘違いして──」
「ハァ……嘘は、結構ですから」
「え?」
「あのルーカス様が、“無理をしなくていい”などと、相手を気遣うようなことを言うはずがないでしょう。昨日もお話した通り、あの黒翼の騎士団の、騎士団長を務めているお方ですよ?」
けれど、ビアンカの言葉をキッパリと否定したアンナは、ヤレヤレと首を横に振った。
「で、でも、確かに──」
「おおかた、怖がるビアンカ様が随分と子供に見えて、手を出す気が失せてしまったのでしょう」
「え……」
「実際、ビアンカ様には少々色気が足りないですし、仕方のないことだと思いますが」
「……!!」
呆れたように息を吐き、肩を竦めたアンナの言葉に、ビアンカは雷に打たれたような衝撃を受けた。
(私に、色気が……足りない?)
まさか、そんな。確かに、お色気たっぷりとは言えないけれど一応女として十七年胸を張って生きてきた。