騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「あのルーカスが、私のことを好きだなんて……。だって、私たちの結婚は国のための政略的なものなのよ? 私たちはただ、お互いの国のために結婚したはずで、そこに特別な感情なんてなかったはずなのに……」
一週間前、執務室でルーカスから情熱的な愛の告白を受けたビアンカ。あまりに突然の出来事に、ビアンカは戸惑うばかりで、彼の気持ちに返事をすることができなかった。
けれどルーカスは、そんなビアンカを前にとても優しく微笑むと、『お前は、お前のペースで俺を愛してくれたらいい』と言ったのだ。
そして宣言どおり、ルーカスはあの日の夜から昨夜まで変わらず、ビアンカに夜の営みを強要することもなかった。
ただただ、ビアンカを自身の腕に抱き締めて眠るだけ。
キスだって──執務室でされた以降、ただの一度もしてこない。
「どうしてルーカスは、私のことを愛しているだなんて言ったのかしら……」
彼からのキスがないことを寂しいと思うだなんて。そんな自分に困惑しきりの毎日だった。
思わずアンナに縋るような目を向けたビアンカだが、それは呆れたような溜め息と共に一蹴されてしまう。
「この一週間、その質問は耳にタコです」
「う……」
「何度も言いますがアンナは、ルーカス様がビアンカ様に想いを寄せておられるなど、ビアンカ様が見たポジティブすぎる夢なのでは? と、思っていますよ」
侍女ならそこは、「ビアンカ様が魅力的だからですよ」とかなんとか、お世辞の一つくらい言えないのか。
アンナはヤレヤレといった様子で首を横に振ると、ティーポットを手に取った。