君と僕と記憶と。
僕は何も言えなかった。



「桐生くん、昨日私とデートしたの?何があったの?」



とても不安そうだった。



僕にも痛いほどその気持ちがわかった。



「うん、デートをした。稲嶺は家にきて僕が作ったオムライスを食べて、帰った。途中、円が来たんだがそこから何か様子がおかしかった気はする。」



僕が必死に考えたスケジュールを無視し、僕のの家に無理やり来たということは言わないでおいた。


「稲嶺…」


「ん?」


返事をしてこちらを向く稲嶺は、今にも泣きそうで。


でも、泣き顔は決して見せないという彼女の意地が見える表情だと思った。


「その、書いてあった1文にはなんて?」
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