御曹司と溺愛付き!?ハラハラ同居
二泊三日 カニ三昧
いい男のため息は、どうしてだか気になる。
それはおそらく、彼の虚ろな目が妙に色っぽいからだ。
ここ、La mer TOKYOの二階にある、カフェ・プレジールは、シアトル発のカフェで日本初上陸店。
そのためかオープン当初は長い行列までできて、テレビ取材もあったのだとか。
とはいえ、閉店前の二十時近くなると客もまばらだ。
La mer TOKYOは、最近できた超大型ビルディングで、上層階にはホテル、そして高級レストランなどがある。
さらには年収四千万とも言われる人たちが勤める有名企業の事務所なども多数入っていて、私、蓮川英莉(はすかわえり)とは無縁の場所だった。
けれど、わけあってプレジールでバイトを始めてから、このセレブな空間にマッチするように必死に笑顔を作り、接客している。
「英莉、あの人来てる」
「……うん」
一緒に働く同じ歳のあゆみは、ひとつに束ねた長い髪を揺らしながら私を肘で突っつき、窓際に座り外を眺めている男の人に視線を移した。
少し長めの前髪をかきあげなにかを考えている様子の彼は、いつもとは違い険しい顔。
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