御曹司と溺愛付き!?ハラハラ同居
「どうして指示に従わなかった」

「あの株は来ると思っていました。ここであてれば、お客さまにも喜んでいただけると」


それを聞いた一木さんは途端に眉を吊り上げる。


「本当に顧客のためか。お前は自分の力を示したかっただけじゃないのか!」


出前のミスのときは、低い声で淡々と私を叱った。
でも、今回は違う。声を荒らげ、固く握った拳を震わせている。


「自分の力を示したいだけのヤツは、ここにはいらない」


今度は声のトーンを少し抑えて言うと、桑田さんは顔を引きつらせてうつむいた。

桑田さんは顔を伏せたまま自分のデスクに戻り、頭を抱えている。
大損害を出したのだから動揺するのは当たり前だ。

でも、今はそんなことを言っている場合じゃない。


「一木さん、先方の社長のスケジュールは確認できました。アポイントを取れる状態ではありません」


スケジュールはびっちり詰まっていて、空いている時間などなかった。


「わかってる。ここに行くから、営業に伝えてくれ」
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