御曹司と溺愛付き!?ハラハラ同居
彼はそう言いながら起き上がり、自分でボタンを外す。
そして……私の手を強く引き膝の上にのせると、なぜだか抱きしめる。

まさか、こんなときにまで恋愛レッスン?

恥ずかしくてたまらなかったけれど、この五日間彼とこんな時間を持てなかったからかうれしくてたまらない。


「英莉……」

どうしてだろう。
彼の声が切なげに聞こえる。


「借金を阻止できてよかった」

「一木さん……」


その瞬間、彼のシャツをギュッと握りしめた。

彼なら、絶対に大丈夫だと信じていた。
でも、目まぐるしく変わっていく株価を前にして緊張の連続だった。
それがやっと、終わった。


「一木さん……」


『ありがとうございました』と言いたいのに言葉が続かない。

「よかった。本当に、よかった」


彼は私を一層強く抱きしめる。
そして私も彼にしがみついたまま、彼の鼓動を聞いていた。


「英莉がいると、強くなれるよ」

「強く?」

「コイツを守らないと、と思う」


私、を?
彼の言葉に胸がギューッと締め付けられる。

今までのどのレッスンより、胸が疼いた。
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