御曹司と溺愛付き!?ハラハラ同居
「悪かったな。さ、食おう」


なんの電話なのか聞く権利なんてない。
でもあんな光景を見たあとだから、気になって仕方ない。

彼は箸を手にすると、再び口を開く。


「スマホ、届けに走ってくれたんだな」

「えっ? ……はい」

「津川が英莉に確認するの忘れたって言ってた」


電話は津川さんだったんだ。
なんだか気が抜けた。


「持って走ったんですけど、もう一木さんの姿が見えなくて……」


駐車場に行ったことは黙っておいた。


「同じ場所に帰るとは言えないか」


彼はおかしそうにクスッと笑う。


「言えませんよ、もちろん」


なんとか話を聞いてしまったことはバレずに済んだようだ。


「俺は言ってもいいぞ」

「もー、からかわないでください」


言ったら困らないの? 桑田さんは?
彼は私が絶対に同居しているとは言わないとわかっていて余裕なんだ。


「からかってはいない。焦る英莉は面白いが」

「だから、それがからかってるんです!」


もやもやはするけれど、彼の笑顔が見られて幸せだった。
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