御曹司と溺愛付き!?ハラハラ同居
「一木さんは私の上司です」

「そんなことはわかっているわ」


彼女は呆れた様子で「はー」と息を吐き出す。


「一木さんは……私を前向きにしてくださる方です」


私は彼の家政婦でしかないけれど、彼と一緒に過ごしているうちに、様々なことを教えられた。

私にもいいところがあること。
今の生き方が間違ってはいないこと。
誰かを信じることで強くなれること。
そして……私にも恋ができるかもしれないこと。


「彼のなにを知っているというの?」


彼女がドンと乱暴にコーヒーをテーブルに置くので、少し中身がこぼれてしまった。


「いえ、なにも……」


とっさにそう答えてしまったが、『なにも』というのは嘘だ。

彼が誰よりも努力していることを私は知っている。
それに、冷たいようで本当は優しいことも。


「彼がどうしてあなたを拾ったのかは知らないわ。でも、あなたはうちの会社ではただの雑草なの。所詮花咲くことはない。身の程を知りなさい」
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