御曹司と溺愛付き!?ハラハラ同居
「私が今している仕事は、桑田さんの仕事のように直接的にお金を生み出すわけではありません。でも、お客さまの信用を得ることはできます」

「そんなの思い上がりよ。最終的に顧客の信頼を得るのは営業であり、私たちの正しい判断よ」


桑田さんも一歩も引かない。


「もちろん、そうです。でも、レポートが間違いだらけの会社に、大切なお金を預けようと思うでしょうか。私は、一木さんたちが必死の思いで積み上げた信頼を崩さなくて済むように、お手伝いできればと思っています」


優秀な人たちに囲まれて、コンプレックスを感じないと言ったら嘘になる。
でも、できないと不貞腐れていてもなにも生み出すことはできない。


「生意気なのよ! 私がどれだけ苦労して……」


桑田さんはそこまで言うと唇を噛みしめ私を睨みつける。そして……。


「どれだけ苦労して淳也を……」


ひとりごとのようにそうつぶやいた彼女は、ガタンと音を立てて立ち上がり、出ていってしまった。


「淳也、か……」


私の前でも『淳也』って……。
やっぱりふたりはそういう関係なのだろう。
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