御曹司と溺愛付き!?ハラハラ同居
「あはは。やっぱりレッスンが足りないな。体がカチカチだ。こういうときは男に体を預けるんだ。ほら、こうやって」


彼は空いている右手で私の頭を自分の肩に誘導する。

さらに体をこわばらせていると「本当に恋人みたいだな」なんて一木さんが言うので、彼の手を振りほどいて逃げてしまった。
桑田さんと彼のキスを思い出してしまったからだ。


「英莉、どうした?」

「もう、レッスンはいりません」

「どうしてだ?」


彼はひどく驚いた様子で私を見つめる。


「もう、私に構わないで」


勝手に涙がこぼれていく。
せっかく泣き止んだのに、勝手に。


「英莉、ごめん。今までずっと、イヤだったのか?」


そうじゃない。
戸惑いがなかったと言えば嘘になる。
むしろ毎日戸惑いばかりだった。


でも、彼に抱きしめられると温かくて、うれしくて……。
すごく幸せだった。

それはきっと、出会った頃から彼のことが好きだったからだ。
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