御曹司と溺愛付き!?ハラハラ同居
それからしばらく彼はなにも言わなかった。
そして、ドンという壁を叩く音がする。


「俺、最低だな。夏目のことをあんなふうに言ったくせして……。本当にすまない」


そんなに謝らなくても……。私が勝手に傷ついただけ。

彼に抱きしめられて、癒されていたのは私。
本当はうれしくてたまらなかったのに。


「英莉。俺……」


一木さんの声が心なしか震えているのに気づき、彼の声が聞こえてくるドアをじっと見つめてしまう。


「俺……英莉のことが好き、なんだ」


今、なんて言ったの?

ドクドクと暴れだした鼓動のせいで、呼吸まで荒くなってしまう。


「レッスンなんて言いながら、お前を抱きしめられるのがうれしくてたまらなかった。でも、英莉がそんなにイヤだったとは知らなくて……これじゃあただセクハラだ。本当に、すまな……」

「一木さん」


私はなにを言おうとしたのだろう。
でも、彼にこれ以上謝らせたくなくて、遮った。
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