御曹司と溺愛付き!?ハラハラ同居
ううん。彼との未来を夢見ちゃダメ。

もしも彼の気持ちが私に少しでも残っていたとしても、彼は将来会社を背負う人間だ。
分相応の伴侶を選ぶだろう。

私のことは、ちょっとしたつまみ食いだったんだ。
会社のことを考えれば、私より桑田さんのほうがふさわしい。

私は自分の気持ちを静めるのに必死だった。
考えれば考えるほど、彼が私を選ぶわけがない。


あゆみは『なにかを簡単にあきらめたりする子じゃない』と言ってくれた。

だけど、やっぱり無理だ。
あきらめないといけないことだってあるんだ。

そんなことを考えているうちに部屋についてしまった。


淳也さんは少し強引に私の手を引いて玄関に入れ、すぐにカギを閉めてしまう。
まるで、逃がさないぞと言われているかのようだった。


「入って」

「でも、あの……」

「入って」


彼は玄関のドアの前に立ったまま、繰り返す。
しかもひどく疲れたような顔をして。

ダイオー電機のことで、ほとんど徹夜だったときよりひどい顔をしている。
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