御曹司と溺愛付き!?ハラハラ同居
「……はい」


私はためらいながらも、靴を脱ぎ部屋に上がった。
もう二度と足を踏み入れることはないと思っていたのに、こんなにすぐに来てしまった。

リビングに入った瞬間、書類が散乱しているのに驚き、ハッとする。
こんなことは初めてだ。


「あぁ、悪い。ちょっとイライラして」


彼はバツの悪い顔をして書類を集め始める。

イライラって、仕事で?
そんなこと、今まで一度だってなかったのに。

いや、もしかして、私に?


「コーヒー、飲むだろ?」


リビングの入り口に立ち尽くしている私に声をかけ、キッチンに行ってしまった彼は、心なしか背中が小さく見える。


「すぐできるから、座ってて」


彼は私に背を向けたまま言った。

私は返事をすることなく、革張りのソファの一番端に座る。
私の定位置だった場所だ。

ここに座ると彼はいつも「もっとこっちに来い」と私の腕を引き、寄り添うように座らされた。
それを思い出すと辛い。
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