御曹司と溺愛付き!?ハラハラ同居
しばらくしてコーヒーを手にした彼が戻ってきた。
そして私の前にカップを置き、じっと私を見つめる。

一旦視線を外した彼は、自分もソファに座り、コーヒーを口にした。


「辞表って、どういうこと?」


彼はまっすぐに前を見つめたまま口にする。
私も彼を直視できなくて、コーヒーに視線を落とした。


「……すみません」

「仕事に不服があったのか?」


そんなことは決してない。
難しくてわからないことだらけだったけど、とても充実したひとときだった。


「いえ……」


私は首を振った。
すると彼はコーヒーをテーブルに置き、私の方に体を向ける。


「それならどうしてだ?」


そんなことを追及されても、言えない。
桑田さんとあなたのことを見ているのが辛いなんて、絶対に。

社内恋愛をして破局する人なんてごまんといるだろう。
それで仕事を辞めるなんて……とは思うけど、桑田さんに自慢顔で勝利宣言される日が来ることを考えると、どうにも耐えられそうにない。
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