御曹司と溺愛付き!?ハラハラ同居
胸にこみ上げてくるものがあり、言葉が詰まる。
すると……。


「そっ、か。最大の褒め言葉だな」


彼は柔らかい笑みを浮かべた。


「もう少しだけ、考えてくれ。本当に会社を辞めたいのか、一時の気の迷いなのか……もう少し。それでもどうしても辞めたいというのなら、他の会社を紹介しよう」


そんな……。
辞表を置いて飛び出した私に、そんなことまでしてくれなくても……。

なにも言えずにうつむいた瞬間、彼が私の手を握ったので驚いてしまう。


「さっきから震えてる。そんなに緊張しなくていい」


そう、だったのか。
そんなことちっとも気づかなかった。


「俺は卑怯だな」

「卑怯?」

「あぁ。英莉からはっきりと別れの言葉を聞くのが怖くて、上司の顔なんてして。英莉は仕事がイヤだったんじゃないかなんて問題をすり替えたけど、本当は俺がイヤだったんだろ?」


別れたいのはあなたでしょう? 
それとも、私との遊びは続けて、一方で桑田さんとは結婚に向けて着々と進むつもり?
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