御曹司と溺愛付き!?ハラハラ同居
彼のことがわからない。


「英莉がここに来てくれてうれしかった。仕事しか頭になかった俺に、なんというか……人間らしい生活を取り戻させてくれた。一緒に飯を食って、一緒に笑い、一緒に悩んで……。そんな生活がどれだけ楽しかったか」


そんなふうに思ってくれていたの?


「淳也さん、あの……」

「お前がいなくなって、愕然としたよ。お前がいないと笑い方も思い出せないんだ、俺」


彼は私の手を離し、眉根を寄せる。


「それならどうして、嘘、なんて……」


そんなに私のことを思ってくれていたのなら、どうして桑田さんとまた接触したの?
なにが本当なの? 
私はただの都合のいい女?

怒りと悲しみが同時にこみ上げて来て、言葉が続かない。


「嘘……。そうか、知ってたのか」


彼は小さなため息をつく。


「俺はまた、英莉を傷つけたんだな。どうしようもないな」


彼はそう言ったっきり、天井を見上げて唇を噛みしめている。
< 274 / 344 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop