御曹司と溺愛付き!?ハラハラ同居
「桑田は……」


沈黙のあと、彼の口から桑田さんの名前が出た瞬間、心臓が飛び出しそうになり、息を呑んだ。


「俺の友達の彼女だったんだよ」


でも、過去の話、でしょ?


「俺の友達、正幸と彼女と俺は、大学時代に一緒に起業しようとしていた仲間なんだ。ふたりは恋に落ちて将来を誓い合う仲までになった」


『正幸』って、桑田さんが淳也さんにキスしたときに出た名前だ。


「それならどうして?」


ふたりは破局したということ?


「正幸が、病気になってしまって……一度は余命宣告をされてね」


淳也さんの言葉に驚き唖然としていると、彼は私の目をじっと見つめる。


「それで、正幸のほうから事実は伏せたままフッたんだ。もちろん、桑田のことが好きで、彼女の将来を考えたからだ」

「正幸さんはそれで?」

「正幸は、桑田が自暴自棄にならないようにと俺に近くで見ていてやってほしいと頼んできた。だから、会社に招いた。まぁ、彼女は優秀なファンドマネージャーだったし、なんの問題もなかったんだ。でも……」
< 275 / 344 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop