御曹司と溺愛付き!?ハラハラ同居
私が言うと、彼女はうなだれてしまう。


「仕事をしているときの桑田さんは凛々しくて……かっこいいです。でも、好きな人のために目を真っ赤にしている桑田さんも素敵です」


桑田さんはハッとしたような顔をする。


「桑田。英莉の言う通りだ。正幸は、本当はお前を待ってる。お前が別れの日が来るたび動揺してしまうように、正幸もお前を思って涙しているんだよ」

「正幸、が?」


やっと口を開いた彼女は、声が震えていた。


「桑田さん、行きましょう」


私が促すと彼女はコクンと頷いた。

淳也さんの車で病院に駆け付けた頃には、もう面会時間は終わっていたものの、無理を言って桑田さんを病室に入れてもらった。


私と淳也さんは、彼女が病室に入ってくのを見守っただけ。
しばらくして部屋の中から桑田さんのむせび泣くような声が聞こえて来て、私まで目が潤んできてしまった。


「英莉。ありがとな」

「いえ……」


ふたりを会わせてあげられて、よかった。
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