御曹司と溺愛付き!?ハラハラ同居
「でも、それはもういいんです。淳也さんが優しいのは知ってますから」


私が漏らすと、彼は腕の力を緩め、私の顔を覗き込む。


桑田さんが手首を切ったことは、とてもデリケートな問題だ。
だから安易に私に言えなかったのだろう。


「優しすぎて、桑田さんのことを突き放せなかったことも、私に心配かけたくなくて内緒にしておいたのも、わかってます」


私が言うと、彼は力なく首を横に振る。


「でも、英莉を傷つけた」


そんなに自分を責めないで。
私はそんな優しいあなたが好きなの。

でも、これ以上好きになるのが怖い。


「私は大丈夫です」

「そんなに強がらないでくれ。お前が壊れたら、後悔してもしきれない」


桑田さんの自殺未遂を目の当たりにした淳也さんは、人が壊れてしまうことの怖さをよく知っているのだろう。

ホントは、このまま彼にすがってしまいたい。
でも、いつか別れの日が来るかもしれないと思うと、簡単には彼の胸に飛び込めない。


「淳也さんは、この先、グローバルアセットマネジメントを背負う人です。私とは違う世界を歩く人」


私の言葉に彼は目を見開く。
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