御曹司と溺愛付き!?ハラハラ同居
ここでバイトしている人は、このビルで働くエリートと知り合いたいという邪な希望を抱いている人も多いらしい。
私は完全に生活のためだけど。


「そんなのいいわよ。行ってくる」


ほとんどやることが終わっていた私は、彼のところに向かった。

でも、もう少しで彼のところに着くというときに、彼は珍しく大きなため息を吐き出した。

息抜きに来るとはいえ、彼はいつも凛々しく、コーヒーを手にしている姿もさまになっているのに、今日はどことなく弱々しく感じてしまう。


「あの……」

「はい、なにか?」


彼は私のことなんて覚えていないらしい。
当然と言えば当然だけど。


「先日、他のお客さまからのクレームで困っていたとき、助けていただき……」

「あぁ、あのときの!」


覚えていてくれたようだ。
ちょっとうれしいかも。


「はい、ありがとうございました」


深く頭を下げると、彼は優しく微笑んでくれる。
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