御曹司と溺愛付き!?ハラハラ同居
「あっ、あの……」

「手、離すなよ。こぼれる」


だから離せないでいるんだけど……。

彼は私の手を握ったまま、カップにコーヒーを注ぎ始めた。
私はといえば、ポカーンと口を開け、なすがまま。


「丁度いい。少し男に慣れようか」


なにが丁度いいのかさっぱりわからないが、彼は注ぎ終わるとやっと手を離してくれた。


「俺は伸びしろのある株を見つけるのがうまいと言われていてね」

「そ、そうですか……」


突然会話が仕事に飛ぶので、頭が混乱中だ。
でも、やっと手を離してもらえたので、ホッとして彼にチラッと視線を送ると、彼は再びニヤリと笑う。


「伸びしろのある女は、自分の手で伸ばしてみたくなる」


『伸びしろのある女』って、まさか、私?

彼の発言に呆然としていると、彼は「腹減った」とマイペースにコーヒーカップ片手に、テーブルについた。


「なにしてる。食うぞ」

「は、はい」


ダメだ。全然ついていけない。
< 51 / 344 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop