御曹司と溺愛付き!?ハラハラ同居
「もしもし、トーリツツーリストにおりました蓮川です」

『おー、蓮川ちゃん、久しぶり。なんか大変なことになっちゃって、心配して……』

「あの、お願いがあるんですけど!」


電話の相手は、プレジールに来る前に勤めていた旅行代理店の仕事を通して顔見知りになった、別の代理店の棚田(たなだ)さんだ。

四十代前半の彼は面倒見がよく、ライバル社だというのに業界のことをよく教えてもらった。
でも、話が長いのが玉にきず。

今は聞いていられないので遮り、話し始めた。


「棚田さん、今日の札幌行の最終便のツアー席空いてませんか?」


旅行会社はツアー用に確保した飛行機の席がある。
予約が埋まらないと一般向けに売られることもあるけれど、直前キャンセルもよくあるのだ。


「あるよ、さっきキャンセルが出ちゃって」


やった!


「それ、譲ってください」

「いいけど、これから北海道飛ぶの?」

「私じゃないんです。知り合いに頼まれて」
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