御曹司と溺愛付き!?ハラハラ同居
「あっ、サンキュ」


彼はカップに手を伸ばしたけれど、私はそれを遮った。


「その前に。お仕事に熱心なのは素晴らしいことです。でも、時には休むことも必要です。そうじゃないと、仕事しか知らないつまらない人間になってしまいますよ」


あー、しまった。
ソファで寝てしまう彼のことが心配で、思わず本音を口走ってしまった。

なにも知らないくせして、偉そうに。


「あっ、すみません。今のは忘れてください」


私は小さく頭を下げ、自分の部屋に引っ込もうと彼に背を向けた。


「英莉」


すると、彼が低い声で私の名を口にする。


「は、はい。ごめんなさい、余計な……」

「いや。お前の言う通りだ」


雑誌をテーブルに置いた彼は「ふー」とため息をついている。


「部長として部署をきちんと回せるようになるまではと、必死に走ってきた。でも、それなりに仕事をこなせるようになってきたら、今度は仕事以外の時間をどう過ごしていいのかわからなくなっていた」
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