放課後4時10分、校舎5階で君を待つ。
「大地・・・」
小さく呟いた平松の声を俺は無視して、遠ざかっていく背中を追おうとした時。
「待って下さい、大地先輩!」
まるで、先程のシュートを打つときのような高い声が、俺を呼び止めた。
あの声は、琴美のものだったのか。
試合に集中していて、深く考えはしていなかったが。
「何」
「あの、監督が・・・呼んでます」
赤堀に呼ばれたことくらい、遅れることどうってことないが、監督となるとそうはいかない。
もう一度彼女が走っていった方向を振り向くと、もうそこに小さな背中はなくなっていた。
「・・・分かった」
ため息とともに吐き出した言葉。
その返事に安心したかのように、琴美は小さく微笑んだ。