放課後4時10分、校舎5階で君を待つ。
式が始まり、体育館には卒業生の名前が呼ばれ始める。
『相川、美空』
「――はい」
透き通るか細い彼女声に耳を澄ます。
『2日の放課後、校舎5階で待ってます』
あの時と同じように、少しだけ彼女の声は震えていた。
式が終わり、最後のSHRが終わった。クラスの女子は泣いていた。
普段ならすぐに教室から出ていくやつも、この日だけは最後の時間を忘れないようにと、仲間と笑いあっている。
朝貰った卒業アルバムの最後のページ。真っ白だったそこは、今では沢山の文字で埋まっている。
でも、まだ終われない。
まだ、青春にピリオドをつけるわけにはいかない。
「大地、この後2次会どうする?」
「―――わり、ちょっとトイレ」
「おー、早くなー」
1段1段踏みしめるように階段を上がる。もう2度と、この階段を、この制服を着て上ることはないんだと思うと、そうせずにはいられなかった。
そして、校舎5階。唯一彼女と過ごした、この教室のドアの前に立つ。
心臓がバクバクと音を立てる。
情けねぇ・・・。こんな事で緊張してやがる。
「っし」
小さく声に出して、扉を開いた――――。
日向大地side end