放課後4時10分、校舎5階で君を待つ。



あ・・・・・・また、だ。



休み時間の賑わう廊下。その反対側から歩いてくる一人の人物と瞳(メ)が合った。


ドクン、ドクン、と少し早くなる鼓動。そんな心臓を落ち着かせるために小さく深呼吸。



1年の秋ぐらいからだろうか。


彼と、瞳が合うようになったのは。



それはまるで魔法にかかったかのように、彼の瞳から視線を逸らすことができなくなるから不思議だ。



微笑みかけるわけでもなく
声をかけるわけでもない。



ただ、数秒。


互いの瞳にそれぞれを映し出す。




いったい彼の潤いに満ちた黒に、私はどういう風に映っているのだろう・・・。




すれ違った刹那ふわり、と彼の香りが鼻をくすぐった。どこか落ち着く彼の香りに、胸の高鳴りが治まらない。





彼の名前は、そう、日向大地(ヒナタダイチ)。


廊下で会うたび瞳が合う男の子――――。






< 8 / 416 >

この作品をシェア

pagetop