届け───私の言葉
____キーンコーンカーンコーン

あっという間に始業式は終わって、もうみんな帰り始めている。

私は春休み中に借りていた本を返しに、一人図書室へ向かった。

「…失礼しまーす…。」

まぁ、案の定誰もいないか。いや、いても困るんだけど…。

私は本を元の場所に戻して、さっさと帰ろうと思った。でもやっぱり、本がたくさんある場所は天国だ。

私は帰ることなんか忘れて、いろいろな本を試し読みしていた。

気づけばもう、夕方の五時。

始業式はお昼に終わったのに、随分自分の世界に入り込んでたんだな…。

私は席から立ち上がり、読んでいた本を棚に戻して、リュックを背負って出口へと向かった。

「やっと読み終わったんだな…。ったく、待ちくたびれたっつの。」

「…え…?なんで、いるの…?」

そう、なんとそこには、今朝話したすばる君が立っていたのだ。

全くもって意味がわからない。

しかも待ちくたびれたって。私、待ってて、なんて言った覚えもないよ…?

「…いちゃダメ?」

うっ…背高いくせに、上目遣いとかしてきたぞ…!

「い、いや、別に、ダメって訳じゃ…ないけど。」

……負けた…。

「ははっ、ごめんな、俺が勝手に待ってただけだよ。まぁ用件は、俺と一緒に帰ること…だな。」

…すばる君と、一緒に帰る…?今日?今から?

だって今日の朝初めて会って、それからクラスも同じだったってだけだよ?

…でも、久しぶりに一緒に帰る友達ができた。私はそれが、心底嬉しかった。

きっとすばる君は、私にとって高校生活初めての友達だ。





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